CONTEMPORARY “URUSHI” 展

CONTEMPORARY “URUSHI” 展

古来、約9000年の昔から私たち日本人が生活の中に取り入れてきた「漆」。

幾度も行う下地づくりのための「研ぎ」、幾層も重ねられた「塗り」。シンプルで奥深い2つの技法を段階に合わせて調整し、繰り返すことで生まれる独特の艶。耐久性と機能性。古くは縄文時代から、私たち日本人の生活に、長く、深く寄り添ってきました。

しかし今、古来から全国各地で培われ受け継がれてきた多様な技術は、少しずつその継ぎ手を失い、消失の危機に瀕しています。それは、時代が移り変わる中で登場した合成樹脂などの技術的発展、住まいや生活様式の変化などにより、生活の中で漆という存在との接点が圧倒的に失われたことに起因しています。自然由来の塗料としての実用性や装飾性など、漆の魅力は今こそ見直されるべきではないかーー。私たち stoop はインテリアという領域で、その価値に今一度スポットを当て、次世代に受け継ぐ一助となりたいと考えます。

11月3日より stoop では、100年以上にわたって京都に拠点を置き、金閣寺の修繕をはじめ仏壇・仏具・神社仏閣などへの仕上げで培った技術力と、多様な独自の表現技法を持つ漆の塗り師集団「牧野漆工芸」と共同で、「漆」を現代のインテリアへと落とし込んだプロダクト開発を行い、その発表の場としてエキシビジョンを開催します。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

こうして10年もの間、世間に発表することもなく続けた実験と創作の時間は、自分をリフレッシ伝統的な漆技法をベースに、長年にわたる実験と試行錯誤の末に生み出した「変わり塗り」と呼ばれる多様なテクスチャー表現の数々を、現代のインテリアへと落とし込んだアートパネルとして展開するほか、stoop の買い付けたフレンチアンティークへと漆塗装を施した家具などを含む、多くの作品を展示販売致します。

さらに、製造工程で生まれた、本来廃棄されるだけの廃材。今回の展示では、これまで購入者の目に触れることがなかったそうした品々に光を当てる試みも行います。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

「塗り」と「研ぎ」の繰り返しで生まれる伝統の美。

仏像や仏具、寺院建築に対する漆の使用は、古く飛鳥時代まで遡ります。

基本的なプロセスは「塗る」と「研ぐ」。塗る対象の素地を整えることに始まり、表面にひび割れ等があれば、漆・糊・木の粉を混ぜ合わせたもので埋めます。塗って埋めることを幾度か繰り返して完全に平らにしてから布を貼り、その上にヘラで下地となる砥の粉を塗り、乾いたら石で研ぐ、を繰り返して下地をつくります。

その後、砥の粉と地の粉によってさらにキメの細かい下地をつくり、ようやく漆を塗るための素地が整います。そこから漆を「塗り」と「研ぎ」の過程を繰り返すことで漆塗りが完成します。

基本的には一日一工程しか進めることができないため、その完成には膨大な時間が必要となります。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

職人たちの好奇心と、数多の実験から生まれた多様な表現。

仏像や仏具、寺院建築に対する漆の使用は、古く飛鳥時代まで遡ります。

アートパネルに使われている「変わり塗り」は、仏像・仏具・神社仏閣に施される伝統的漆塗り技法とはまったく異なる工程を経て生み出されます。鏡面のようにムラなく美しく仕上げるという従来の目指すべき姿に対して、新たな表現を生み出すことを目的に重ねられた試行錯誤。

錫粉や鉄粉を混ぜ込む、あえてクラックを発生させるなどの日々の試行錯誤の中で、不採用になったサンプルは100種をくだらないといいます。伝統技法による日々の仕事の後に、「遊び」として実験と失敗を繰り返した中で、奇跡的に発生したテクスチャーを、再現性や完成度を高めて、オリジナルの表現技法として確立させてきた牧野漆工芸。彼ら職人一人ひとりの飽くなき探究心を結実させた多様なテクスチャーの美しさを最もダイレクトに愉しめる形として、アートパネルに仕上げました。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

また、長年培われてきた従来の伝統的な漆塗りの技法をそのまま落とし込んだアートパネルもご用意。牧野家に代々受け継がれる「朱」、塗り師として仕上がりの美しさに定評のある牧野漆工芸のクラフトマンシップを存分に堪能することができる漆の「白」、箔押し師が金箔を張って仕上げる「金」など、シンプルだからこそ明らかになる技術力の高さや文化的価値を存分に味わえます。

廃材に命を吹き込み、新たな価値を創出する。

仏像や仏具、寺院建築に対する漆の使用は、古く飛鳥時代まで遡ります。

製造工程で生まれた、本来廃棄されるだけの廃材。今回の展示では、これまで購入者の目に触れることがなかったそうした品々に光を当てる試みも行います。展示するのは、漆を吹き付ける工程で対象物の下に敷かれる天板や台。作業のたびに自然と重ねられた漆は、歪ながらも生命力を感じさせ、それが自然界で育まれた恵みであることを思い出させてくれるようです。

未来に継承すべき技術を、継承できる姿で次世代に受け継ぐ。伝統技術に携わる人々の仕事に向き合う姿勢と、その伝統工芸が生み出される現場にこそ、そのヒントがあると私たちは考えます。
製造現場で目にしたものに本質的価値を見出し、新たに命を吹き込むこと。これも、本プロジェクトが掲げるミッションです。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

アンティーク家具への漆仕上げ。

stoopがバイイングしてきたフレンチアンティーク家具。

それは牧野漆工芸の創業と時を同じくして、約100年前にフランスの大衆に道具として使用されてきた品々です。
本プロジェクトでは、国は違えど年月を同じくして後世に引き継がれてきたアンティークと伝統技術を掛け合わせ、漆仕上げを施したアンティーク家具を販売します。

鈍い黒漆の輝きをまとった味わい深い家具達は、どこか懐かしさがありながらもモダンな仕上がりに。
歴史と異国文化のクロスオーバーから生み出される新たな価値と美。
現代のインテリアに寄り添う、本企画の見どころの一つです。

MAKINO URUSHI DESIGN,牧野漆工芸,伝統工芸,現代アート

仏具とヴィンテージ家具。信仰のためなのか、暮らしを彩るためなのか・・目的は違えど、後世まで受け継いでいくことを前提としたプロダクトに手をかけることで、さらに価値を塗り重ねていく。
「やっていることに変わりはない」ーー4代目が口にした言葉に、私たちは心から共感を覚えます。

歴史と伝統に裏打ちされたその技術力を背景に、膨大な実験と数多の失敗を繰り返した結果から生まれた珠玉のテクスチャーの数々は、見るものの好奇心を刺激します。

伝統と革新、プロフェッショナル精神と遊び心。自由と格式。
そして、職人一人ひとりの飽くなき探究心。

イノベーティブな表現は、いつの時代も相反するものが結実する時にこそ生まれるもののように思えます。
その表情の一つ一つは、私たちにクリエイティビティとは何か、を語りかけてくれるようです。

幾層にも重なる、そんな奥深き漆の魅力を感じに、ぜひこの機会にお立ち寄りください。

CONTEMPORARY “URUSHI” 展
Date
2023. 11.3 Sat. - 11.26 Sun.
Place
gallery stoop
東京都江東区白河2-5-10
清澄白河B2出口より徒歩3分
東京都現代美術館より徒歩6分
Open
12:00 - 19:00
火・水・金・土・日曜+祝祭日
Close
月・木
Brand