海外デザイナーとのコラボレーションや伝統技術を取り入れたコレクションまで、豊富なラインナップを誇るフジエテキスタイル。中でも、同社が持つ技術とデザイナーやアーティストとのコラボレーションにより生まれる、「 TEXTILE ART COLLECTION」は、テキスタイルの表現を新機軸へと導きます。今回、グラフィックデザイナー小林一毅とのコラボレーションによるコレクションが誕生しました。
彼が描くのは、子どもとの日々の中で見つけた、曖昧で不確かな存在――コンクリート片を「石」として手渡された経験、子供が描く自由図形の文字、刻々と姿を変える水面の揺らぎ。
小林が2019年の展覧会より続けているテーマ「Between Black & White」。ケント紙に黒のペンで墨入れする制作過程、黒と白の純粋な形そのものの美しさを、本作では人々の生活にぬくもりと柔らかさをもたらしてきたテキスタイルというマテリアルへ表現。
「黒」と「白」の２色に限定された作品は、より研ぎ澄まされた造形や余白に小林ならではの世界観を感じることができます。
平面作品のベースとなるのは日本の綿産業発祥の地とされる、愛知・三河地方のテキスタイル。 さらしや染色を施さず綿麻の混紡糸を平織りで仕上げることで、天然素材が持つ素朴な風合いを残し、限りなくフラットでナチュラルな生地に仕立てています。
この生地に対して、小林のグラフィックデザインを繊細に表現しているのが、「黒箔」の技術。 この箔は、伝統的な友禅染の技法をルーツに持つ京都の捺染工場で仕上げたもの。
ポリエステルベースの黒箔はシャープな質感を持ち、素朴なテキスタイルとのコントラストが新たな視覚的表現を生み出しています。
ポリエステルの平織生地に、熱で膨らむ特殊な樹脂を加工して生まれた作品「Fu（ふう）」。
染色されたラインと膨らみのある白い部分は、それぞれ別の版を使い、個別にプリントされています。 白い部分には、加熱によって発泡・膨張する特殊な樹脂を使用。その樹脂をプリントし、次に染料を重ね、その後熱をかけて樹脂が膨らみ、生地を内側から引っ張って立体化させます。
柄もまた、平面と立体で見え方が変わるため、小林の手描き図案を10柄以上、版に起こして試作。 描かれたデザインに素材の変化や膨らみの動きが重なり、偶発的な美しさが生まれました。
今回小林が描く作品は、子どもと過ごす日々や生活の中の出来事から見つけた、日常のささやかな瞬間。 誰かに見せるというより、自身の記憶や観察したことをそっと記録するような、私的なもの。 フジエテキスタイルが手掛けるカーテンやクッションなどのテキスタイルの数々も、私たちの生活空間にとってはずっと身近なもので、小林作品と深い部分で共振しています。
生活の記憶を丁寧に辿るこのコラボレーションは、日常の中にある創造性と、テキスタイルが持つ力を改めて発見させてくれます。
