100年近く培ってきた仏具への漆塗り
愚直に研鑽を重ねた巧みな技術
牧野漆工芸は初代牧野新吉が1928年、輪島塗の塗師(ぬし)として修行を開始したことに端を発します。十数年の修行を経たのち、京都にて仏具・仏壇の塗師に。
以来代々、神社仏閣、仏具や仏像の修復をメインに伝統的な塗技技法に基づいた漆塗りを手がけてきました。その高い技術力が評価され、職人として携わった神社仏閣は日本全国にわたります。
神社仏閣・仏具への漆工芸一筋で
磨き上げた柔軟性と澱みない仕上げ
神社仏閣の漆塗りの業務は、常に現場仕事。対象となる建物や柱などの建材そのものの状態はもちろん、天候、気温や湿度、などの環境要因にも大きく左右されます。晴天の日が続き湿度が低い状態だと漆はうまく乾かず、次の作業を進めることもできません。工程は変えることなく、段取りを変えることで作業を滞りなく進める、高い環境適応能力と柔軟性が問われます。
また、漆器と異なり大物が多くなる仏像・仏具の修復作業は、広い面積をムラなく美しく仕上げる技術力が求められます。ごまかしのきかない緊張感漂う世界で、正確に、ゆるされた時間内で、任務を成し遂げる。作品ではなく仕事である、あくまでも「職人」であるからこそ研ぎ澄まされてきた鋭さが、その仕上がりには端々にまで満ちています。
新しい波を恐れず積極的に取り入れる
若手からベテランまで変わり続ける職人集団
70代から20代まで幅広い年代が揃う牧野漆工芸。これまでの常識や慣習にとらわれることなく、新しい技術や表現の習得に積極的であることも特徴です。
初代から変わらぬ手作業による伝統的な漆塗り技法は引き継ぎつつ、スプレーガンを使った吹付による漆塗りも2代目・牧野新一からいち早く習得。時代に合わせた技術的進化を取り入れることで、新たな表現や対応可能範囲の幅を広げてきました。
3代目・牧野俊之を筆頭に若手の発想を尊重するベテラン層に、4代目となる牧野昂太をはじめとする好奇心旺盛な若手職人たち。常にアイデアの新陳代謝が行われる工房は、職人集団らしい緊張感で満ちていながら、どこか居心地のよさも漂います。この道一筋の職人が多い中、牧野漆工芸は2代目から4代目までが皆、他業種他業界での仕事を経験した後に、自ら塗師を継承する道を選んでいます。柔軟性や未開の領域に挑む土壌や気概、時代が変われど「伝統」の本質的な価値を守り抜くと言う覚悟は、そうした背景からも代々育まれ今日に引き継がれています。
人の可能性や個性を信じ、覚悟を決め果敢に挑戦しあうプロ集団だからこそ生まれた結晶の数々が、見飽きさせない奥深さ、吸引力を湛える Makino Urushi Design の真髄といえるでしょう。