Martinelli Luce（マルティネリ・ルーチェ）の創業者である Elio Martinelli（エリオ・マルティネリ）は、イタリアのトスカーナ地方にあるルッカという街で生まれました。
父親の Plinio Martinelli（プリニオ・マルティネリ）は、ルッカで照明業を営んでおり、幼少期のほとんどを家業の手伝いをして過ごしました。最初の試作品のいくつかはここで生まれ、独自の照明技術を磨いていきます。
Elio（エリオ）は、ルッカのパッサリア美術学校で建築芸術の学位を取得した後、建築に応用される力学を学び、1942年にフィレンツェ美術アカデミーに入学します。1947年に舞台美術の学位を取得して卒業しました。ここで彼は「演劇的な」空間の考え方を身に付けます。
それは、ある場所を可能性のある物語やその受け皿として捉えるというビジョンであり、彼が照明をデザインする際に発揮されるものです。在学中の1946年には父親の Plinio（プリニオ）が営む照明業を再び手伝います。
卒業後はセットデザイナーとなり、演劇のアクションやナレーションに自然と溶け込む装飾的かつ、高品質な舞台照明を自ら制作します。
1950年に Plinio（プリニオ）が亡くなると、彼はルッカの照明事業を引き継ぐことを決意します。冷蔵カウンターの製造や、バー、レストラン、店舗の内装を担当するルッカに拠点を置く COF社と提携してインテリアデザイナーとして働き始めます。
個人邸宅から人気レストランまで、さまざまな空間でのプロジェクトが続き、1953年ルッカのベルナルディーニ広場の地下に通称 “laboratory（実験室）” と呼ばれる小さなスタジオを構えます。後に主軸となる製品コンセプトのほとんどはこの場所で産声を上げました。
この初期の成功が、Martinelli Luce 社を正式に設立するきっかけとなりました。
第二次大戦後復興中のイタリアでは物資が不足していたため、機能的でありながら美しいものづくりをすることはデザイナーにとって使命でした。
Martinelli Luce の照明器具は階級や社会的地位の区別なく、全ての家庭を照らす快適さを約束します。Elio（エリオ）は本能的に余分な装飾を排除し、デザインと機能の一致、有用性と美しさの共存を目指しました。
勢いを増す市場のニーズに応えるべく、Martinelli Luce 社はペンダント、フロア、ウォール、テーブルといった多機能の照明を開発します。また、ガラスからプラスチックという新素材の出現に伴い、Elio（エリオ）はプラスチック素材を加工する独自のラインをすぐに設備し、メタクリル樹脂を使った提案が主軸となっていきます。
1960年代は、メイド・イン・イタリアが時代を席巻します。
Bruno Munari（ブルーノ・ムナーリ）、Carlo Scarpa（カルロ・スカルパ）、Gio Ponti（ジオ・ポンティ）、Franco Albini（フランコ・アルビニ）に代表される偉大なデザイナーたち、Anna Castelli Ferrieri（アンナ・カステッリ・フェリエーリ）、Marco Zanuso（マルコ・ザヌソ）、Castiglioni（カスティリオーニ）兄弟、Ettore Sottsass（エットーレ・ソットサス）に代表される1940年代末から1950年代初頭にかけて活躍し始めたデザイナーたち、そしてEnzo Mari（エンツォ・マリ）、Mario Bellini（マリオ・ベリーニ）、Elio Martinelli（エリオ・マルティネリ）に代表される最近デビューしたデザイナーたち。
この3世代に渡って、自分達のスタイルで世の中を変えようとお互い競い合っていました。
この頃から Elio（エリオ）は妻 Anna（アンナ）とヨーロッパ中を周り、展示会に参加し始めます。特に、Gio Ponti（ジオ・ポンティ）に招待されて訪れた1966年の第1回「ユーロドムス」は雑誌 “Domus” 主催のイベントで、アート、デザイン、インテリアと異なる領域のプロダクトを一同に展示する珍しいものでした。
Elio は Gio Pontiに対して畏敬の念を抱いており、なかなか言葉を交わせない中、Anna 自ら Gio Ponti の元へ駆け寄り「主人がご挨拶したいのですが、お時間よろしいでしょうか？」と二人を引き合わせます。
Martinelli Luce の照明器具は Gio Ponti の目に留まり、彼に販売を後押しされたことで量産化がスタートします。数年のうちに、Martinelli Luce 社はメイド・イン・イタリアブランドの仲間入りを果たし、インテリア分野の最も重要な見本市にブースを出展するようになります。
